「いつまでも人のお世話にならず、元気に暮らしたい」─それは誰もが願うことだと思います。そうした想いから、都城においても最近特に介護予防に対する意識が高まっているという話を耳にします。実際、介護予防の現場はどうなのか、都城市役所の健康部介護保険課に伺い、お話を聞いてきました。
─まずは都城市の現状について知りたいのですが、高齢者は多いのでしょうか。
他の市町村と比べても多いと思います。65歳以上の人口が占める割合、つまり高齢化率は29.56%。3人に1人が高齢者なんです。介護保険制度が持続可能な制度であるためには、介護給付費が今以上に増加しないようにしなければなりません。そのため、都城市では体操の教室や講座を開くなど、さまざまな取り組みを積極的に行っています。
─具体的に、どういった教室や講座がありますか。
現在、一番力を入れているのが「こけないからだづくり講座」です。各地区にある公民館が会場で、週に1〜2回実施しています。音楽に合わせて、30分程度の簡単な体操をする講座です。現在、市内全体で132もの公民館で実施されています。
─かなりの数ですね! それだけ多くの公民館の講座を運営するのは、大変そう。
いえいえ。この講座が特徴的なのが、各地区の住民のみなさんが自主的に介護予防の講座を運営しているところなんです。もちろん、市がこの講座について広報したり、立ち上げ支援をしたりしていますが、あくまできっかけづくりをしているだけで、主役は住民のみなさんなんですよ。
私共は希望があった公民館に、まず説明会をしに伺います。それでみなさんに、開催するかしないかを決めてもらいます。開催するとなれば一定期間、市や地域包括支援センターから職員を派遣し、体操指導などを行いますが、それからは住民のみなさんが中心になって運営しているのです。
─受け身ではなく、自主性を大切にされていると?
そうなんです。「やってください」ではなく、「やりたい」というみなさんの意識を大切にしているんです。
─手応えはいかがですか。
期待していた以上です。動機づけ支援として、定期的に市や地域包括支援センターの職員が体力測定を実施しているのですが、開催初回時の測定と比べると、維持・向上した方が75%もいらっしゃいます。ただ、その数字は体操の効果だけでなく、住民のみなさんが意欲的に工夫を凝らして、講座をつくりあげていったからでもあるんですよ。
─講座をつくりあげる!?
各公民館ごとに、どんどん講座をアレンジしてみなさんが飽きないよう、楽しめるようにしているんです。たとえば、表彰状をつくって休まずに参加している人を表彰したり、本来は市が貸し出す体操用のオモリなどを手作りしたり、講座の様子を撮影してビデオ制作したりもしているんですよ。その意欲にはいつも驚かされています。
それに、もともとは体操するための講座ですが、体操が終わってからみなさんで楽しめる、ビーチサッカーやスカットボールといったレクリエーション、茶話会やカラオケといったイベントなど、さまざまなアイデアを持ち寄って、楽しめる集まりにしようと工夫されています。住民さんたちでつくるデイサービスといった感じなんですよ。中には、週に3回も実施しているところもあるんです。通いはじめたばかりの方も、参加を重ねるごとにどんどん元気になっています。私も各公民館に出向くことが少なくありませんが、いつもみなさん元気で、こちらが元気をもらっているぐらいです!
─「主役は住民のみなさん」という前提でスタートしたから、いい方向へと発展していっているのでしょう。講座というより、みなさんで楽しめるサークルのようですね。
以前は、身体の機能的なことばかり意識して取り組んできましたが、高齢者のみなさんと関わる中で、それだけではいけないということに気づいたんです。実際は生き甲斐とかやり甲斐、楽しみとかを求めていらっしゃる。やはり、そうした場が必要で、私共としては昔ながらのご近所づきあいのように各地区にコミュニティをつくっていきたい。それにより、住民同士で自然と見守りや声かけをするようになりますし、市としてはそうした方向づけをする手助けをしていきたいですね。
─いい距離感で見守っておられる印象です。
この講座を通じて、住民のみなさんの力がとても大きなものだということを目の当たりにしました。高齢者だから支えてあげなければとか、何かしてあげなければと思ってしまいがちでしたが、みなさんにはとても大きな力があります。私共はそれを引き出すお手伝いをしていければと思います。そしてこれからも講座の実施箇所をどんどん増やし、長く続けていくことで、地域のみなさんが元気に暮らしていける街にしていきたいですね。
都城市役所 健康部介護保険課