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特集「ウエルネス都城花火大会、箸感謝まつり…… 『消えた花火大会の真実』 市内から多くの花火が消えた理由とは?」

昨年の夏の夜空は、例年とは違った。

 

これから本格的な夏のシーズン到来という矢先、市内最大級の夏祭り『ウエルネス都城花火大会』中止という、衝撃のニュースが飛び込んできた。

しかも、衝撃はそれだけに止まらない。

 

市内中心街近くで観賞できる最大級の花火大会でもあった『箸感謝まつり』、頭の上に打ち上げられているかのような錯覚さえ覚えるほどの迫力満点な花火が味わえる『山田かかし村の夏まつり』、規模は小さいながらも大変充実した内容が口コミで広がり、人気急上昇中であった『まつり西岳』、シワッチ(志和池)という響きから、故郷となっているウルトラマンのショーが子供達に大人気であった『まつり志和池』……なんとこれらも中止という事態に陥ってしまったのである。

 

どうして、このような信じ難い状況になってしまったのだろうか?

 

この急激な展開に、市民の間では様々な憶測や噂が飛び交ったが、真実が大々的に語られることも無いまま1年が過ぎた。

 

案の定、今年も先の花火大会開催の知らせは無い。

 

そもそも『中止』とあるが、それは一時的なものなのだろうか? それとも復活の予定の無いものだろうか。

 

花火の消費が全国トップクラスの『花火王国都城』に一体何が起こったのか!? その真実に迫る。

中止になった理由とは?

まずは各花火大会の中止になった理由を探るべく、それぞれの関係者へ話を聞いてみた。

 

 

◆ウエルネス都城花火大会

【実施回数】18回

【場所】沖水川河川敷広場

 

【中止の理由】

(1)花火の玉殻・来場者のゴミが散乱する。

──花火大会の開催時は水田の稲が育つ時期であり、右記の理由により田んぼの所有者などから強い反対があった。

 

(2)都城壮年団連絡協議会の方で、協賛金の集まり等、準備が上手く進まなかった。

 

【復帰の可能性は】

沖水川河川敷での開催は今後ありえない。

場所を変えて行うという考えもあるが、沖水川のような広大な場所でなければ、大きな花火を上げる事は不可能であり、そのような場所が見当たらないので、同規模での開催は無理。

──関係者より

 

 

◆箸感謝まつり

【場所】神柱公園

 

【中止の理由】

『箸』に因んで、毎年8月4日に開催されていた伝統芸能行事であり、祭りの終盤に盛大に打ち上げられる花火が魅力の1つでもあったが、打ち上げた花火の玉殻が、平成18年秋にグランドオープンした都城市総合文化ホールの屋根に積もるという事態が発生──。

それにより、莫大な清掃費用がかかり、その費用を市が払うのか、主催者側が負担するのかで問題に──。

 

【復帰の可能性は】

花火を上げない、もしくは小規模の花火を打ち上げるのであれば開催は可能であるが、今のところ復帰の予定はない。

──関係者より

 

 

◆山田のかかし村夏まつり花火大会

【実施回数】17回

【場所】一堂ヶ丘公園

 

【中止の理由】

毎年8月10日に行なってきたイベント。花火の迫力は市内屈指との評判も。

中止になったのは予算の関係もあるが、最も大きな理由は花火の玉殻が近隣の畑に落ちて困るという声があったので。

夏まつりの時期は苗が定着したばかりの状態なので、そこに花火の殻が落ち、荒れてしまう事を懸念──。

また、平成18年にはビニールハウスが火の粉で燃えてしまうという事故が発生。消防局より指摘を受け、場所を変更して開催するも、今度は電線に当たってしまう等の問題が発生──。

 

【復帰の可能性は】

山田町では夏まつりとは別に秋まつりも例年開催している。そこで昨年より夏まつりを秋まつりに合併させ開催することに。(昨年は10月末に実施)

この時期になると、畑での収穫が終了した時季であり、尚且つビニールハウスからもビニールが取り外されている為、花火による問題をクリアすることができた。

今年の『山田かかし村のまつり』は9月27日(日)に開催されるので、乞うご期待。

──山田総合支所産業振興課

 

 

◆まつり西岳

【実施回数】20回

【場所】西岳小グランド

 

【中止の理由】

(1)まつり西岳の実行委員を務めてきたのは、『高友会』という有志により集まったメンバー。男女合わせて30人ほどで、祭りの運営や舞台設置〜撤去など、また資金面でも補助金は無いため、企業や商店へ協賛金を募るなど、ほぼ全ての作業を自分達で行なってきた。

しかし、20年間同じメンバーで活動してきた事もあり、高齢化してしまった。その為、気力・体力面ともに、運営準備や安全性確保の為に奔走するのが難しくなってきた。

 

(2)西岳地区の人口の過疎化が進み、若い世代が少なくなってきた。その為、高友会の意志を引き継ぐ世代が不在という状況──。

また若い夫婦も少なくなるにつれ、子供の数も減少。そもそも、まつり西岳は、『地域の子供を中心とした祭りをする』=『村おこしに繋がる』という意味合いを持って実施されていた。しかし、地域の子供達が少なくなってきたことで、祭りを実施する意味が薄れてきた。

 

【復帰の可能性は】

今のところ、予定はない。西岳地区の人口減少に反比例して、来場者は年々増加の一途を辿っていただけに、凄く心残り。

──まつり西岳実行委員会 高友会

 

 

◆まつり志和池

【実施回数】12回

【場所】志和池市民広場

 

【中止の理由】

(1)まつり志和池の実行委員をしていた『志和池商工振興会』が昨年の3月に解散してしまった。

それまで、都城商工会議所より派遣された職員が常駐していたのだが、それに伴う費用を削減するよう県からの指導が入り、支所は置かないという方針が決定。

 

(2)志和池地区の高齢化・過疎化の進行が影響し、祭りを引き継いでくれる団体が不在であった。色々と存続に向けて奔走したが、解決案が見つからず、止む無く中止となった。

 

【復帰の可能性は】

絶対に無い。まつり志和池だけでなく、ウエルネス都城花火大会やまつり西岳など、他にも沢山の祭りが姿を消したので、残念な気持ちでいっぱいだ。

──旧志和池商工振興会

浮上してきた問題点

関係者等の証言で明らかとなった花火大会中止の理由。

 

その中より、重複した意見を取り上げてみると、

 

◆花火の玉殻によるトラブル

◆人口の過疎化

◆実行委員会の高齢化や不在

◆資金調達が困難

 

…というものが挙げられる。

 

特に『花火の玉殻』によるトラブルが、3つの花火大会を中止に至らせる直接の原因となっている。

 

花火玉この玉殻とは、打ち上げ花火の火薬等を包んでいる球状のケースのようなもので、ダンボールに似た紙で出来ている。

 

空に打ち上げられた花火は、爆発によりこの玉殻を粉砕し、四方八方に飛び散らせながら、綺麗な色彩や形を形成する。つまり、1発打ち上げる毎に、花火を包む『玉殻』が粉砕された状態で、地面に散乱する事になるわけだ。大規模な花火大会となると、数千〜数万という単位で打ち上げられる為、散乱する玉殻は大量であり、周辺地域への影響は見る側の想像も及ばないほど凄まじい。

 

ウエルネス都城花火大会の場合、この散乱した玉殻は、花火大会の翌朝に、実行委員の方々やボランティアスタッフの手により回収されているのだが、やはり水田の中に入っている玉殻を拾うのは、苗に細心の注意を払いながらの作業になるため、大変な心労を伴うという。

 

ちなみに、全国的に見ても、玉殻の被害を含め、火災や騒音等の理由で近隣住民からの同意が得られず中止に追い込まれるという例は存在するようだ。

 

また、『実行委員会の高齢化や不在』という点も深刻な問題である。

 

かつて、ウエルネス都城花火大会を運営する『都城市壮年団体連絡協議会』の会長(当時)に取材を行った際、次のように語っていた──。

 

「壮年団員の年齢層が上がってしまい、花火大会の協賛金のお願いや会場設営など、体力的に厳しくなってきた。また、引き継いでくれる若い世代の不在もあり、壮年団の存続が危ぶまれるなど、色々な問題が出てきている……」

 

今回中止になった西岳では、まさにこれと同じ状況が起きている。

 

実行委員会の主な仕事に『協賛金』を募る活動があり、これにはかなりの時間と労力を要するわけだが、ましてやこの経済不況の中となれば、より多くの箇所を回らなければならない事は容易に想像がつく。そのような状況下で、気力・体力が低下した中高年者が行うのは酷な話である。

 

当初は、短期間に相継いで花火大会が中止になったことから、特定組織からの反対や指摘など、同一の理由によるものではと推測していたのだが、蓋を開けてみれば、『玉殻』というトラブルの原因は同じであれど、『水田』『畑』『公共施設』と、影響を及ぼした箇所は三者三様であり、不運にも昨年、その問題がそれぞれにクローズアップされる事となってしまったわけだ。

 

また、西岳や志和池で起こった『人口過疎化』『運営団体の後任不在』なども、以前より問題視されてはいたが、それが表面化され中止に至ったタイミングもまた偶然なのである。

存続方法は無いのか?

ここで1つ不安な疑問が頭を過ぎる。

 

中止になった花火大会でクローズアップされた問題は、他の花火大会でも充分に起こりうる事である。

 

それでは、今は健在の花火大会や祭りも、水面下では何らかの問題が発生しており、中止の危険性をはらんではいないのだろうか?

 

都城市内に現存する大規模な祭り──『高崎夏まつり』『高城観音池まつり』『盆地まつり』。

 

それぞれの主催元へ話を聞いたところ、『高崎夏まつり』『高城観音池まつり』に関しては、市や地域の方の協力を得て、これまで何の問題もなく開催されてきているとの回答。

 

しかし、少なからずとも厳しい意見であったのが『盆地まつり』。今年から市より支給されるイベントの補助金が10%削減されてしまったという。その削減された分を協賛金で賄わなければならないのだが、経済不況の影響もあり、集めるのが困難な状況にあるようだ。

 

この経済不況の影響による資金不足の問題は、実は全国でも頭の悩ませ所となっており、中止に追い込まれた花火大会は数十箇所に及ぶ。中止に至らないまでも、運営難になっている祭りは多く、それは東北三大祭りと呼ばれる『仙台七夕まつり』『青森ねぶた祭』『秋田竿燈まつり』も例外ではなく、協賛金不足やチケットの売れ残りなどに甚大な影響を及ぼしているという状況だ。

 

このような資金問題は当分続くものとみられ、市や企業・商店等は、不況の折、協賛金を縮小する方向にある。

 


では、そんな状況下で祭りの存続は可能なのか?


 

兵庫県三田市では、協賛金の足りない部分を補うべく、市民に花火存続を訴えるステッカーを購入してもらうという手法を採用した。そのステッカーで得た収入を協賛金として花火の費用に充てるというもので、市や企業・商店だけではなく、祭の存続を願う市民が協賛金の一部を支えるというものだ。

 

このような発想が、祭りの存続の鍵を握るのではないだろうか。

 

祭りの存続を願うのは、実行委員だけではなく、私達市民でもあるはずだ。昨年中止になった時に、本誌に寄せられた多くの残念な声がそれを物語っている。

 

──夏の思い出──昔の思い出──夏の楽しみ──祭りには人それぞれ、色々な思い入れがあったはずだ。それを取り戻す為に、今、我々の力が必要なのではないだろうか。(ガノ)