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「剣道と青少年の育成 〜剣道の目的と意義〜 宮崎県剣道連盟・都北支部顧問 教士七段 日置益光(83歳)」

宮崎県剣道連盟・都北支部顧問 教士七段 日置益光氏 写真

剣道の目指すものは、「有形の技によって、無形の心を磨く」こと、それによって体得した諸徳を実生活で実践することです。さらに言えば、指導者の教えをそのまま実生活に取り入れて忠実に実行することに本当の意義があります。剣道徳の生活への移行と社会への展開にこそ剣道の真の存在価値は見出されるので、そこに剣道が高く評価され、広く普及する意義が存在します。

 

剣道の目的は、あらゆる角度から様々に定義づけられてきましたが、その表現に多少の差があるだけです。勝敗を争うことだけにこだわらず、一番大事なのは精神的訓練だと思います。打ったり、打たれたりする中、心の攻め合いが大事で魂の練り合いにこそ、本来の剣の妙諦があるのではないでしょうか。

 

「人間形成」という現代の教育用語は「人格形成」と「身体育成」の両面の意を含んでいます。剣道を学び、美しい姿体と豊かな精神とを養い、社会に貢献できる人材を育成することが大きな意味で剣道窮極の目的です。

 

指導とは、読んで字の如く「指をさして導くこと」で行く先の方向を指示することです。しかし、あまり細かく指導すれば、結局自分の型にはめ、本人の個性を殺すことになります。個性の啓発、これは剣道に限らずあらゆる教育の根本理念です。人は顔も異なるように、性格も十人十色であり、能力もまた千差万別です。型にはめず、その子の持っている長所短所を見出し、それを宝として指導していくことが指導者の務めであり目的です。

 

どの国に於いても、時代であっても、子供の個性を尊重し、これを啓発することが教育の根本であり、指導の要諦と言うべきでしょう。「剣を通して道を学ぶ、学ぶことで生きがいを育む、その育む気持ちで自分の将来の夢を話す。」私の好きな言葉です。

 

大分県中津藩の剣豪「島田虎之助」先生は、「剣は心なり、心正しからずれば、剣また正しからず。剣を学ばんとする者、まずは心より学ぶべし」と教えています。「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」と言います。その意味は、技の鍛錬はもちろんですが、剣道を通じて強い精神力とたくましい体を培うことは、大きな意味があると思います。

 

最近では、様々なスポーツが盛んになりました。その一方、日本の伝統的なスポーツへの関心は年々薄れてきているのではないでしょうか。

 

剣道は「道」という字が示すように、単なるスポーツではなく、礼に始まり、礼に終わるという礼儀を重んじる世界に誇るべき日本の伝統文化です。