読者から寄せられた都城の『噂』をもとに、調査隊長・ガノが真相解明!
今回は『早水神社』に関する噂を調査!
●早水神社の池は『底なし沼』と聞きましたが、本当でしょうか? でも底が無ければ水は溜まらないよなぁ〜と思いながらも、深さは気になります。(まあクン大好き/26歳) |
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●早水神社のそばの池にはお寺にある大きな鐘が沈んでいるらしい。(コンシェルジェ/47歳) |
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池に鐘が沈んでいる……。
なるほど……つまりは、
『早水神社の池は底なしで、その池の中に釣鐘が沈んでいる』
という訳だ。
だがしかし、『釣鐘』とは普通『お寺』にあるものじゃないのかね……?
何はともあれ、まずは現地調査へと早水神社に足を運んだのだが……
いきなり予想だにしない出来事にぶつかってしまった。
なんと、沢山の池があるではないか!(約6個程)
これじゃ、どれが『噂の池』なのか、見当も付かない…。
最初に出くわしたのは『髪長姫池』。
そうそう、ここ早水神社は、『諸県君牛諸井(もろかたのきみうしもろい)』の娘である『髪長姫(かみながひめ)』の生まれた地という伝説のある場所なのだ。
話が少しずれるが、髪長姫は国一番の美人と言われ、その噂は都にまで届き、『応神天皇』に召されて都に上ったのだ。
そこで皇太子である『大雀命(おおささぎのみこと)』が髪長姫に一目惚れし、父帝・応神天皇に懇願し、姫を皇太子妃に賜ったのである。
後に大雀命は即位され、髪長姫は『仁徳天皇妃』となったのである。
この伝説から、早水神社には『応神天皇』『牛諸井』『髪長姫』の3名が奉られているのだ。
その髪長姫の美貌にあやかり、『ここから湧き出る水を飲むと美人になる』という言い伝えがあるのが、『髪長姫池』なのである。
この池には、近くに名前や伝説まで書いた看板が立っている…。
…という事は、ここは今回の噂の池とは違うようだ。
だが、他の池を見ても、先程のような看板が立っていない。
……というか、『さっきの池にしか、名前や伝説が記されていない……。』
つまり、大々的な伝説のある池は先程の1つだけで、後は普通の池という事なのか?
『釣鐘が沈んでいる底なしの池』という噂は、ただの噂に過ぎなかったのか?
諦めかけていたその時……
何気に見た『公園案内図』を見た私に衝撃が走った!
何と、全ての池に名前が付いており、その中の1つに、『釣鐘池』とう名称の池があるではないか!
「この名前で釣鐘が沈んでいない方がおかしい!」
これが噂の池に間違いないと確信した私は、案内図を頼りに、釣鐘池のもとへと走る!
そして、到着して目の当たりにした光景に目を疑った!
「浅ーーーーっ!!」
底なし所か、底がメチャメチャ見えてるじゃん…。
児童用プール位の深さじゃないの!?
しかもキレイだし…。
「終わった……」
こんな浅い池に釣鐘が沈んでいる訳がない…。
……いや…しかし待てよ!
『釣鐘池』という名称が付いている位だから、何かしら釣鐘と関連はあるはずだ!
そこから、釣鐘池の伝説について調査を開始したガノ。
だが、思いのほかこの調査は困難を極めた。
早水神社の多くの伝説を知る宮司さんが他界しており、頼みの綱は『早水神社』や『髪長姫』に関する文献のみとなってしまったのだが、これらには『髪長姫池』の伝説については書いてあるのだが、他の池についての情報が載っていないのであった。
こうなったら最終手段として、『宮司さんと親しかった人物』で、なおかつ『釣鐘池の伝説を知る人物』を探すしか道は残されていない…。
はっきり言って、ワラをも掴む思いの捜索であった。
だが、捜索開始から2週間経った頃、右記の条件に合う、1人の男性を紹介してもらう事に成功したのである!
「早水神社の池の事についてですかぁ。
今は池の底がコンクリートになっていますけど、昔はボラ土だったんですよ。そこから綺麗な水が湧き出ていていましてねぇ…このように地下水の噴出する所を『モックン』と呼んでいたんですよ。
その綺麗な水面に髪長姫は自分の姿を映して行水していたようですね。」
「…釣鐘池の名前の由来についてですかぁ…。これはですねぇ2通りの言い伝えが残っているんですよ。」
「昔は『神仏習合』と言う風習があって、神社とお寺が一緒になっていたんですよ。」
(ガノ)「そういう事だったんですか! これで神社に釣鐘という謎が解けました!」
「しかしですねぇ、薩摩藩で300年に渡って続いた『浄土真宗の禁制』が始まると、お寺や仏像が次々と壊され始めたんです。
そこで、お寺のシンボルである『釣鐘』だけは何としてでも残したいと思った当時の宮司さんが、『この池の中に釣鐘を隠した』という説と、『当時、この池の場所に釣鐘が建っていたから』という説が『釣鐘池』の名前の由来なんです。」
(ガノ)「!!……とっ、という事は、池の中に釣鐘が沈んでいるとい噂は本当かもしれないんですね!!」
「…それなんですがね……」
「釣鐘が隠されているというのは本当なんです。
でも、隠してある場所は釣鐘池の中ではないんです。」
「以前の宮司さんが亡くなる前にですね、親しかった私に釣鐘の本当の隠し場所を教えてくれたんです。」
何という事だろうか!
あくまでも伝説に過ぎないと思っていた噂が現実であり、しかも数百年もの長きに渡り、早水神社の釣鐘は守られ続けていたのである!
今後、この方は早水神社の釣鐘を掘り起こし、長い眠りから解放してあげようと考えているそうだ。その際に、立ち会う事まで許可下さった。
今回の取材で、都城史に残る、早水神社の歴史を紐解いたような感覚を覚えると共に、このような伝説や歴史を後世に伝える為にも、より多くの知識を手に入れ、執筆していく事を誓うのであった。
※この記事は紙面「きりしまフォーラム 2008年4月号」に掲載されたものです。