先月号の本誌特集『お年寄り凄ファイル』に登場した、松山一成さん(72)。同コーナーでは、陸上の世界大会への出場を夢見て走り続ける『スーパー長距離ランナー』として紹介したが、実は松山さんには走ることを通して叶えたいもう1つの夢がある。
それは、知的障がいを持つ人達が健康で幸せになってほしいということ──。
松山さんには、娘の恵美さん(36)がおり、彼女は知的障がい者として出生した。それを受け、松山さんは恵美さんや同じ境遇の子供達に対し、生活及びスポーツの面で数々の支援活動を積極的に行ってきた。
そんな中で感じたのが、『知的障がい者達が活動できる場が少ない為に、運動不足に陥りやすい』という事。
そこで、『彼らの活動の場を広げてあげたい』と考えた松山さんは、スペシャルオリンピックス(※)でコーチをしていた時の経験を生かし、2008年に知的障がい者の陸上競技を支援する団体『ユートリーアスリート』を設立した。
ユートリーアスリートは、養護学校等を卒業してから運動不足による生活習慣病などを防ぐ事、そして走ることに喜びや充実感を味わい、自立の手助けをする事を目的として設立。活動開始から4年目の現在は、知的障がい者、保護者、支援者等を含め、約40人のメンバーが在籍している。
練習内容は基本的にはマラソンを中心に行い、走力を伸ばす為の訓練などは一切課さない。
「当団体はアスリート養成を目的とはしていませんので、自分のペースで走って、皆と一緒に走る楽しさを感じてほしいんです。
また、練習での苦しみや充実感を一緒に体験することで、健常者と障がい者がお互いを理解する近道になると思うんです」と語る松山さん。
その言葉通り、練習時には皆が一緒になって走り、練習後には差し入れを食べながら会話を楽しむなど、そこには隔たりなど一切感じさせない自然な姿があった。
障がい者の活動できる場、特に障がい者スポーツの必要性を訴える松山さん。その根底には、『彼らがいつまでも健康で幸せであってほしい…』という思いがある。
「知的障がい者は誰かのサポートが必要である場合が多く、自ら積極的に体を動かすという姿を見かける事は少ないのですが、私は知的障がい者であっても、スポーツを楽しむ姿をこれまで沢山見てきました。
したがって、彼らの活動できるスポーツクラブ等が少しでも多く存在すれば、それだけ体を動かせる機会も増えると思いますし、保護者としても運動不足やそこから派生する健康不安に対する心配事が軽減されますからね」
現在、メンバーだけでなく、一緒に活動してくれるボランティアやコーチ等も募集しているユートリーアスリート。最後に松山さんは、この団体の素晴らしさについて、次のように語ってくれた。
「私は知的障がい者の方々を元気にしたいが為にユートリーアスリートを設立したのですが、純粋で心が優しく、素晴らしい所が沢山ある彼らと触れ合うことで、多くの感動を与えられ、逆に元気にさせてもらっています!(笑)そういう意味では、知的障がい者の方だけでなく、健常者にとっても、ユートリーアスリートは有意義な場所であると思いますよ!」
(ガノ)
■ユートリーアスリート練習概要
◎日時/日曜…6時〜8時 水曜…18時半〜20時 ※水曜日は雨天休み
◎場所/市営陸上競技場
◎会費/無料
◎問合せ先/TEL:24-3176(松山)
※知的発達障がいのある人達に様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じ提供している国際的なスポーツ組織。