4月5日に福岡で行われた日本ボクシングコミッション(JBC)公認の女子プロテストに、都城レオスポーツジム(有馬隆文会長)の原口梨沙さん(30)が合格した。
宮崎県内のプロボクサーは宮崎市出身の上村里子さん(34)に次いで2人目、都城のジムからは初となる。
■プロフィール…1978年12月12日生まれ。 鹿屋市出身、日南市酒谷乙在住。身長157cm、 スーパーバンタム級。 |
原口さんがボクシングを始めたのは6年前。都城市山之口町に勤務していた頃、「ストレス解消に」と都城レオスポーツジムに通い始めた。もともと体を動かすのが好きで、父親が剣道や柔道をしていたこともあり、幼い頃から遊び感覚で筋力トレーニングをしていたという。
「これからの時代は女性も強くなければ」という父親の考えの影響で格闘技に興味があり、ボクシングを選んだ。
現在、ジムでの練習は週に2日ほど。勤務先の宮崎南部森林管理署(日南市酒谷乙)から約50分かけて通い、有馬会長とのミット打ち、男子プロ選手とスパーリングなどをみっちり3時間行う。
リングの上では迫力あるパンチが次々と繰り出される。有馬会長曰く、指導方法は男女関係なく、タイプ別に行っているそうだ。
ジム以外でのトレーニングは、筋トレ、約10kmのロードワークなどを行い、スタミナをつけている。自炊をしながら、日頃の体調管理にも気をつかう。
日本の女子ボクシングの公認プロは昨年2月からスタート。テストはシャドーボクシング1ラウンド、スパーリング2ラウンドで3名の審査員により合否が決まる。
「ボクシングは8割が気持ちとスタミナ。彼女はとにかくまじめで日々の練習を怠らない。そのため基礎がきちんとできていてスタミナもある。何より気持ちが強い。」と有馬会長。原口さんにプロテストを薦めたのは昨年秋頃で、受験を決めてからはプロテストに向けた練習を積み重ねた。
今年4月の女子の受験者は原口さん1人。そのため、スパーリングの相手の階級に合わせて減量した。「やるだけのことはやってきた。練習通りやればいい。」という有馬会長の言葉を信じて臨んだ。
「当日は緊張というより、減量から開放されるという気持ちが強かったかも。」と苦笑いで振り返る。
そして見事合格。周りからの反響も大きかった。原口さんがボクシングをしていることを初めて知った仕事仲間は、女子プロボクシングに興味津々の様子だったという。
憧れの人は元プロボクサーの具志堅用高氏。対ファン・グスマン戦(1976年)のDVDを観て、スピード、パワー、勇敢さに衝撃を受けた。プロテスト当日は具志堅氏のチャリティーイベントがあり、グローブにサインをもらい、写真も一緒に撮ってもらった。
そんな原口さんの趣味は読書。ボクシングという激しいスポーツをしているせいか、普通に過ごす時間がより穏やかに感じられ、とても大切なのだという。また、テンションをあげる音楽はJ-POP。練習に集中でき、自分のリズムが取りやすいそうだ。
7月20日には大分県でデビュー戦が行われる。対戦相手は長身で足を使って回り込むアウトボクサータイプの山口県の藤崎愛さん(18)(マサ伊藤ジム)。
一方、サウスポーの原口さんは相手に踏み込んでいくボクサーファイタータイプ。得意の右フック、左ストレートを武器に、左のクロスも練習して臨む。「デビュー戦に向けて練習を重ね、その結果を試合で出したい。」と意気込む。
原口さんは公務員であるためファイトマネーは受け取れない。そのため、半分はシューズなどの物品で受け取り、もう半分は福祉施設に寄付するという。
「女子ボクシングは公認後間もないためマイナーな競技。少しでも多くの皆さんに観てもらえるようになりたい。そのためにも現在活躍している女子ボクサーを目標に、プロになっても基本練習を大切に、技・メンタル・肉体ともに鍛え、応援して下さる皆さんの期待に応えられるようなボクサーを目指していきたい。」と今後について話してくれた。
貴重な練習時間の合間にもかかわらず、ひとつひとつ丁寧に、そして真っ直ぐに答えてくれる姿勢が印象的だった。仕事との両立は想像以上だと思われるが、有馬会長の「継続は力なり」の言葉を体現している期待の女子プロボクサーである。(順)
■取材協力/都城レオスポーツジム TEL/21-3572 都城市久保原町3街区14-1号