読者から寄せられた『噂』をもとに、調査隊長・ガノが真相解明!
今回は上長飯町で行われているという『祭り』に関する噂を調査!
●上長飯町で、女の人しか参加できない奇妙な祭りがあると聞いたのですが…?(まるちゃん/30歳) |
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おいおいおい!
そんな素敵な祭りがあるなんて聞いたこと無いぞ!?
だが、女性しか参加できないという変わった祭りだとすると、話題性も大きい。
ということは、ネットで検索したら案外すぐに情報が掴めるんじゃないだろうか!?
『上長飯町』『女祭り』で検索っと…。
……………
ものの見事にヒットしない……。
その後も、色々とキーワードを変更して検索するが、全くかすりもしない…。
こうなってくると、嫌な予感 が頭を過ぎる……。
「女祭りって、本当にあるのだろうか?」
こうなったら、上長飯町に住む人達に聞いてみるか…。そう言えば、上長飯町在住の知人がいたなぁ。手始めに聞いてみようかな……。
ワラをも掴む思いと、若干諦めモードが入り交じった状態で電話をかける。
(ガノ)「ねぇねぇ、女祭りって聞いたことある?」
(知人)「あるよ〜。十八夜祭のことでしょ〜。」
……呆気なく祭りの名前まで分かってしまった。
更に詳しく聞くと、どうやら上長飯町の『坂元地区』で行われているようで、その知人は、十八夜祭に詳しいという人物まで紹介してくれた。
「こんなに、労せずに調査が進むなんて、この企画以来初めてじゃないのか?」
▲十八夜祭に詳しい高田和子さん |
日を改め、十八夜祭の詳細を伺うべく、坂元地区副館長兼婦人部長を務める高田和子さん(71)を訪れた。
そして、高田さんの口より、遂にベールに包まれた祭りの詳細が語られるのであった。
「このお祭りは明治19年から続いていてね……」
(ガノ)「ちょっと待って下さい! 明治19年からっていうと……」
「そうですね、今年で123年目になりますね。」
……(絶句)……
ここまでの長寿祭りであるにも関わらず、全く情報が入手できなかったなんて、本当にベールに包まれた祭りだなぁ…(汗)。
「──それでね、当時の坂元地区では、乳幼児──特に男の子の死亡率が高かったそうなんです。
なぜなら、昔の農村地区では家族全員が労働力だったので、お母さん達は子育てに専念することが出来なかったんです。それに加えて、医療面や衛生面も、現代に比べると環境が整っていませんからね。
そこで、何とか地区の乳幼児が元気に育つように……と願うお母さん達が集まって、神様を祀り、祈願する行事を行った事が始まりなのです。
これを機に坂元地区の婦人会組織も誕生したそうで、以降婦人だけの行事として、毎年4月18日に十八夜祭が開催されているんです。」
「ちなみに、農家のお仕事は、毎年5月くらいから本格的に始まるので、『家庭と農業を頑張るぞ!』という景気付けも兼ねて行っていたようです。」
▲正面に見えるのが十八夜祭の祈願石碑 (小鷹神社内) |
「祭りの内容は、まず午前中に小鷹神社に祀ってある祈願石碑を掃除して、綺麗にしてあげることで、一年間の感謝の気持ちを伝えます。
そしてお昼になると、坂元地区に住んでいる女性と子供が公民館に集まって、飲んだり食べたりしながら、歌や踊りを交えて賑やかに過ごします。その時に、元気に育っている子供や、新たにやってきたお嫁さんの披露をしたりするんです。」
「ちなみに、私がこの地区に嫁いできたのが昭和34年だったのですが、この年以降に子供が小学校に上がるまでに亡くなったという話は聞いたことがありません。私達の祈りが通じているのだなぁという感謝の気持ちでいっぱいです。」
(ガノ)「なるほど。しかし、一番の疑問はここなんですが、男性は参加できないんですか?」
(即答で)「ええ、できません。」
(ガノ)「…なっ、なぜ参加できないんですか?」
「これはですね、女の人の苦しみから生まれた祭りだからです。
昔は男尊女卑が強く根付いていましたので、子供が育たないという悩みや苦労など、旦那に言える状況じゃなかったんです。
そこで、旦那に話せない事を女性だけが集まって話し合い、解決したという経緯があるため、女性だけのお祭りになってるんです。」
女性と子供しか参加できない魅惑の────
……失敬、謎の祭り。
話を聞いて、大体の内容は掴めたのだが、俺の本能は、どうしても、祭りの会場へ潜入取材したがっている!!
何とかして、入れないものだろうか──。
遂に迎えた十八夜祭当日。
その日、祭りが行われる坂元地区公民館に、1人の魔性の女 が姿を現した。
十八夜祭とは似つかわしくない、アジアンテイストむんむんの魔女──。
人は彼女を『ガノリーン』と呼ぶ──。
さぁ、いよいよお楽しみの会場入りだ。
女性達に囲まれて過ごす夢のようなこの日をどれだけ楽しみにしていた事か。
足早に扉を開け、遂に潜入成功!
おやおや、みんな俺の事を見て笑っているが、美しくなりすぎてしまったかな?
──だが俺が男だとは気付くまい!
しかし、この俺に寄せられる笑い声のトーン……
どうもドリフっぽいのが気になるが……まさか……!?
なっ、何てこった!
この会場には『余りにも若すぎる女性』と『余り若くない女性』しかいないじゃないか!!(汗)
俺はとんでもない会場に潜入してしまったのではないだろうか……(汗)
「あらあら、おかしな方がお見えになりましたよ。それでは、何か出し物でもやって、皆を楽しませて下さいな。」
(ガノ)「エェーーーッ、嘘でしょーー!?」
だが、この流れ、この空気、そして皆の俺に何かを期待する瞳……このシチュエーションで断るのは至難の業だ。
ここで断ったら男じゃない。……っていうか、今は女か(汗)。
(ガノ)「よし、それじゃ踊りをしましょう!」
(ガノ)「それじゃぁ、BGMはギターサウンドバリバリの曲でお願いしますよ!」
……って言ったにも関わらず、流れてきた曲は三味線サウンドバリバリの民謡……。
こうなったら、メタルのノリで民謡を踊るという、未知の領域に足を踏み入れるしかない…。
こうして、連続3曲もメタル舞踊を敢行し、会場からは惜しみない拍手と笑いが寄せられる。
その歓声の中、新ジャンル舞踊の第一人者となったガノリーンは、体力の消耗と脱水症状により、完全に燃え尽きて いた…。
(ガノ)「とっ、ところで高田さん……ハァ…ハァ…(汗)」
(ガノ)「最初から気になっていたんですがねぇ……、なぜ『若い女性』の姿が見えないんでしょうか……。」
「実はねぇ、それが一番の頭の悩ませ所なんですよ。今の若者の家庭では、共働きをされている方が多くて、仕事の都合上参加できない方がとても多いんです。
それ以外にも、地域との関わりが疎遠になっている家庭もあったりしますので、結果、このように若い人達の参加者がいなくなっているんです。」
「またですね、若い方だけでなく、年輩の方の参加も減少しているんです。年を取っても仕事をしないといけない時代ですし、高齢になると参加するのが大変になったり、亡くなっていく方もいらっしゃいますからね。
ですから、坂元地区の世帯数は年々増加の傾向にあるんですが、それに反して十八夜祭への参加者数は年々減少しているんです。」
そうだったのか…。
しかし、この状況は楽観視できないのではないだろうか? 十八夜祭を伝承していく人達も減少し、それを次の世代へと伝えていく若者の足も遠のいているとなれば、100年以上続いた歴史ある祭りが、自然消滅すらしかねない……。
だが、そんな状況にも関わらず、高田さんは優しい口調で語る。
「若い人達は、十八夜祭に参加できない事に気を遣わずに、仕事を精一杯頑張ってほしいの。そして、時間にゆとりができたら、祭りに参加して、上の世代の方達と親睦を深めてほしいんです。きっと学べることがたくさんありますから。そして、この歴史ある祭りを、次の世代へ伝えてくれるようお願いしますね。」
こうして、終始笑いの渦を巻き起こしていた、ガノリーンの十八夜祭は幕を閉じた。
いやぁ、かなりハードなひとときだったが、それ以上に楽しかった。
何が楽しかったって、このシチュエーションと空気。
自分以外全て女性というのもあるが、参加者も自分より随分年下か年上の方ばかりで、正に世代を越えた交流がそこにはあった。
笑い方、話し方、話題、笑いのツボなど、至るところで普段味わうことの出来ない新鮮さを感じた。
むむむっ……。
この楽しさを味わいたいが為に、来年も参加したいんだが、自分は坂元地区出身ではないしなぁ……。
(その前に、女性でもないが……)
子供達の健康の為に……坂元地区の女性達の思いが、代々受け継がれている十八夜祭。
未来永劫、神のご加護がありますように──
そして、良き伝統行事として続いていきますように──。