2008年12月1日、いよいよ「イオンモールMiELL(ミエル)都城駅前」がオープンする。オープン初日にはたくさんの人が期待に胸をふくらませ、ミエルを訪れることだろう。
ただ、既存の商業施設としては顧客離れを心配する声も多く、また、イオン系の施設が2つあることを疑問視する声もある。
そこで、フォーラムではオープンに先立ち、様々な疑問を解消するべく、あるいは単に新し物好きの野次馬根性から、「イオンモールMiELL都城駅前」を取材してみた。
■ミエルはどんな施設?
「イオンモールMiELL都城駅前」(以下ミエル)は、敷地面積5.3万平方メートル、延床面積6.4万平方メートル、約1700台の駐車場を備えた大型商業施設だ。
イオンモールとしては全国で初めて、ダイエーを核店舗とし、サブ核店舗として1階に「無印良品」「田中書店 プラスゲオ」「ゴルフ5」「ザ・ダイソー」を置く。また2階には「ベスト電器」と宮崎県初出店となるアミューズメント「楽市楽座」の2店舗が出店し、フロアを賑わせている。
ミエルは開放感ある二層吹き抜けの建物となっており、内部はイーストコートとウエストコートとに分けられる。営業店舗はフロアマップの通りだが、簡単に見どころを紹介しよう。
フロアマップはこちら (PDFファイル) [サイズ:412KB]
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■1階イーストコート
「ゴルフ5」を核に、都城初のレディスファッション「Pate*bloom」、「axesfemme」「TILE」などのニューフェイスや、「シェ・トナミ」などの地元店が出店。また、「ペットシティ」、「田中書店 プラスゲオ」、生活雑貨店「プラスハート」、貴金属やブランド品買い取りの「リサイクルキング」も入店している。
■1階ウエストコート
核店舗は「無印良品」。ファッションではレディスカジュアルの「RNA UNISON」が西日本初登場。レディスバッグ「Cuir SACS BAR」は九州初出店で、その他カジュアルショップ「PIN-UP」、地元化粧品会社の直売店「ビューティプランニング」などが出店。さらに、大理石の上で新食感のアイスクリームを提供する「マーベラスクリーム」、「イタリアン・トマト ケーキショップ」やシュークリームの「ビアードパパ」など、スイーツの定番も揃う。
■2階イーストコート
「ベスト電器」と「楽市楽座」がフロアを活気づけ、ファッションではニコルが展開する「HIDEAWAYS」が出店。地元からはジーンズショップ「BENGAL」が入店し、メンズバッグの「SACS BAR ANOTHER LOUNGE」、レディスウオッチの「i clock」、アクセサリー「ANAHITA STONES」、「島村楽器」などが軒を連ねる。
■2階ウエストコート
お楽しみフードコートは「マクドナルド」「リンガーハット」などの大手チェーン店、讃岐うどん店「丸亀製麺」、コリアンフード「石焼ビビンバあんにょん」など7店舗で賑わう。座席は600席が用意され、ゆったりと食事を楽しめそうだ。ファッションでは「シネマクラブ」「tutuanna」などヤングアパレルテナントをはじめ、キッズブランドの有力店「apres les cours」、「BREEZE」も出店。
■レストラン街
モール中央部分。チャイニーズレストラン「万豚記」、イタリアン「ポポラマーマ」は九州初。「はざま牧場」は初のイートインショップを出店し、ミエルでも目玉店となっている。その他、都城でお馴染みの「SAKURA」、「まるうま」も。
■どうして都城?
こうして見どころを紹介されると、すぐにでも財布を手に出掛けたくなるのが新し物好きの悲しい性だが、肝心の財布の中身が心もとない、という人もおられよう。
12月にはボーナスも出るし、定額給付金ももらえるらしいから、ちょっとくらいは浪費しても、という人もいるだろうが、金融不安がささやかれているし、景気もよくないし……というのが正直な感想ではないだろうか。
実際、読者の方から寄せられるアンケートには、期待と不安が入り交じった意見が多い。
「楽しみだけど、おサイフがピンチ!(35歳主婦)」
「今まで市外で買っていたブランドが地元で買えるのはうれしい。でも買い過ぎちゃいそう(28歳OL)」
「選択肢が増えるのは嬉しいけど、ジャスコがあるのにどうして?(34歳会社員)」
…といった声もある。
そこでフォーラムでは、ミエルのゼネラルマネージャー野口誠氏に取材協力を依頼し、市民の気になるところをガッツリ聞いてみた。
――なぜ、都城なんですか? しかもジャスコがあるのに。
野口氏/都城市は宮崎県内第二位の人口を要する都市。様々な施設、店舗があり、医療機関も充実しとても住みやすい。でも、「時間を消費する」、つまり楽しむためのショッピングセンターがないんです。
ミエルは、「用事がある、必要な物があるから行く」施設ではなく、時間消費型の施設。イオン系ショッピングセンターが2店舗存在することになりますが、ミエルはコンセプトが違いますから、市民の皆様には「選択肢が増えた」と思っていただきたい。
――でも、市民の消費はあまり活発ではないようです。
野口氏/しかし、買い物のために宮崎市や鹿児島市まで出向いている人は多いですよね? 私が思うに都城の方々は独立性がありますから、遠出をせずに、市内で全てが揃うならそうしたいという方が多いと思うのです。いや、むしろそういう街にしたい、独自性をもって発展していきたいという、力強さがあるのではないでしょうか。
――そう言われれば、そんな気が(笑)。
野口氏/それに、都城市は交通の便がいい。都城の方々だけでなく、市外から多くの方が集まると思いますよ。ミエルは都城駅から徒歩8分の距離にあるので、市外からJRさんを利用して来られるお客様も増えると思います。オープン直後から約2カ月の期間、お帰り用の切符をあらかじめ購入していただいて、ミエルのJRトクトクキャンペーンの参加店で帰りの切符をご呈示いただくと特典を受けられるような特別企画を用意し、電車でのお客様を増やしていきたいと考えています。
――ただ、地元の店舗としては、ミエルさんは脅威でしょうね……。
野口氏/地元の店舗様からすれば、確かに我々は「大歓迎」ではないと思います。しかし、市外からも多くの人が訪れるということは、地元の店舗様にとってもチャンスが拡がると思うのです。実際、都城駅前の商店の方々とタイアップキャンペーンを展開するという計画もあります。いわばミエルは「黒船」。当初は混乱もあるでしょうが、このミエルの登場を機に、地元商店街、その他多くの店舗様が刺激を受け、お互いに発展していければと考えています。
(2008年11月14日取材)
その昔、浦賀沖に黒船が来航した時、日本は大混乱に陥った。砲撃されるという噂が飛び交い、人々は不安におののいていたという。しかし、それから日本が文明開化・近代化への道のりを歩んでいったことはご存じの通り。私たちも黒船の来航をきっかけに、都城全体で発展していく道を模索するべきだろう。
都城市商業観光課にも話を聞いたが、市としても「ミエルができることを地元店舗は悲観的にとらえることはない」との考えだ。「ミエルができることは都城に人が多く集まることであり、自分の店をアピールするかつてないチャンス。いかにして集客するかは各店舗が考えてほしい」と担当者は話す。ピンチをチャンスにしていく努力は、なるほど困難ではあるが不可能ではない。
■安全・保安対策は?
ところで、ミエル付近は学生の通学路にもなっており、人や車が増えればそれだけ事故や事件の危険性が増す。読者の意見の中にはそれを心配する声もあったが、宮崎県と都城市ではミエル出店開発計画に先立ち、「環境」「騒音」「交通」に関する要望を提出したという。
イオンモール側ではそれらの要望を検討し、対策を講じ、市の条件をクリアしてオープンにこぎ着けた。
例えば従来、269号線沿いの出入口付近では右折禁止の表示があるにも関わらず、強引に右折を行う車が跡を絶たなかったが、現在ではセンターラインにポールが立ち、物理的に右折ができなくなっている。また、平面駐車場は見通しの良いシンプルな車両動線となっており、安全性が考慮されている。さらに館内のエレベーターには監視カメラが設置され、犯罪を未然に防ぐ配慮も。ミエルによると、周辺地域と調和できるよう市が要望した以上の対策を講じているという。
■ミエルで何が見えるか
都城市は南九州の主要都市でありながら、近年、心なしか元気がない。東国原知事をイメージキャラクターにして商品を売り出す手法も、もはや使い古された感があり、経済はスタミナ切れで停滞気味だ。ミエルのオープンは、都城経済にとって大きな刺激になることは間違いない。その刺激は、都城にどのような影響を与えるか。ミエルという黒船は、都城に何をもたらすのだろう。