読者から寄せられた都城の『噂』をもとに、調査隊長・ガノが真相解明!
今回は『伝統行事』に関する噂を調査!
●『かせだうり』という伝統行事があるそうですが、どんなものですか?(いわもっち/38歳) |
||
かせだうり……
名前から察するに、私の推測では鹿児島県は『加世田市で出来た瓜』が何らかの形で関与しているとみた!
しかし、この伝統行事の名前は耳にした事はあるが、実際に見た事は無い。
そもそも、現在も行われているのだろうか?
そこで調査に取りかかり、色々と調べていく内に、『かせだうりに詳しい方が都城市役所の秘書広報課にいる』という情報を入手し、その人物とコンタクトを取ることに成功した。
そして、『かせだうり』の詳細について、快く教えて下さった。
「この行事は方言で『かせだうぃ』とも呼んでおりまして、小正月(1月15日付近)に『志和池地区』『沖水地区』『山田地区』で行われている『五穀豊穣』『家内安全』『無病息災』を祈願する伝統行事です。」
(ガノ)「ちなみに、この行事は現在も行われているんですか?」
「はい、行われております。しかし、この行事は地区の壮年団の方々が中心になって行っているのですが、会員の高齢化や減少に伴って、規模も小さくなっているという状況なんです。」
(ガノ)「そうなんですかぁ。ところで、これはどのような事をするのでしょうか?」
「この行事は、まず、壮年団の方々が、風呂の薪から出る『すす』で顔を黒く塗り、頬被りや帽子をかぶった『福の神』に扮装します。」
(ガノ)「ほぉ〜、要するにシャネ○ズみたいな福の神と想像すればよいのですな!」
「えぇ…(汗)。まぁ、タキシードではなく、この福の神はカッパを着てミノを背負っていますけどね。…なぜカッパを着ているのかは、後になったら分かりますよ(笑)。
そして、最大の特徴として、
『神様は口をきいてはいけない』
という決まりがあります。
この神様達が地区の家々を回って行き、神様のやってきた家の住人は、『ようこそ!』とばかりに、家の中へ招待します。
そこで、焼酎や御馳走等でお持てなしをし、福の神を上機嫌へとさせるわけです。」
(ガノ)「なるほど。それじゃぁ、御馳走が美味しくても『美味い!』って声も挙げられないわけですねぇ〜(笑)」
「そうですね〜。
しかし、口をきいてはいけない』醍醐味は、この後に起こるんです!(笑)」
「このお持てなしを受けた福の神は、その家の住人に、手作りで作った100円位の品を、なんと5,000円位のボッタクリ値で売りつけようとするんです!」
(ガノ)「……本当に福の神!?」
(ガノ)「入れる神様、間違ってません!?」
「……えぇ、確かに福の神です(笑)。そこで、住人は少しでも値切ろうと、焼酎等を飲ませて神様の機嫌を取り、安くしてもらおうと計らいますが、口を利いてはいけない福の神は、身振り手振りで、少しでも高く売りつけようとします。
この福の神と住人による値段交渉の面白いやりとりが、この行事の醍醐味なんです!」
「結局、高いお金で売ることに成功した福の神は、家を出る際、住人に『出て行け〜』とばかりに、水をかけられてしまうんです(笑)。ですから、最初からカッパを着ているわけなんですよ。」
(ガノ)「な〜るほど、準備のよい福の神というわけですな(笑)」
「しかしですね、このやりとりの一つ一つにそれぞれ意味もありまして、例えば、福の神に商品を高値で売りつけられ、支払ったお金は『御祝儀』として取り扱われ、『高値で買ってくれたら良いことがあるんじゃないかなぁ〜』という祈願が込められております。
また、最後に福の神に水をかける行為には、『田んぼの水が涸れませんように…』という意味合いが含まれているんです。」
(ガノ)「へぇ〜。つまり、家内安全や五穀豊穣などを、面白おかしく表現しているわけなんですねぇ!」
(ガノ)「あっ、そう言えば、この『かせだうり』という名前の由来っていうのは何かあるんですかねぇ?」
「あぁ、これはですねぇ、よく『加世田市の何かが関係しているんじゃないか』って言う人がいるんですがね……」
(ガノ)「 ! ! ……………(汗)」
「……実は、『稼いだ家に売りつける』…という言葉が由来だと言われており、これは『富を皆で分配しようじゃないか』という意味合いのようです。」
いやぁ〜、伝統行事とは本当に奥が深いですなぁ〜。
こうやって、意図を知る事で、改めて素晴らしさを再認識できるというものです!
しかし、最近では壮年団の会員数減少や高齢化に伴い、伝統行事や各種イベントに支障が出ているというケースをよく耳にするようになった。
都城の素晴らしい文化を残すためにも、皆さん是非とも立ち上がろうではないか!
◆かせだうり写真協力/都城市役所秘書広報課
※この記事は紙面「きりしまフォーラム 2008年4月号」に掲載されたものです。