読者から寄せられた『噂』をもとに、調査隊長・ガノが真相解明!
今回は『都城に輝く北斗七星』に関する噂を調査!
●以前ネットで見た事があるのだが、都城とその周辺の神社を繋いでゆくと、北斗七星の形になるらしい。(Romper/66歳) |
||
youはshock!!
なんだ、このミステリアスな噂は!?
北斗七星と言えば、俺達『北斗の拳』世代の男には神秘的な星座の代名詞!
北斗神拳伝承者の『胸に7つの傷のある男』のマネをして、自分の胸にマジックで北斗七星を書いていた少年時代を思い出すぜ…。
思い出話はさておき、この噂……余りにもスケールがでかすぎじゃないか!?
しかも、事実だとしたら、結構話題になってそうだけど、聞いた事もないぞ…。
とりあえず半信半疑…いや、半信すらしてない状態で、ネットによる調査を開始してみた。
(数分後……)
「ぅあたたたたたたたたっ!!」
「なんじゃこりゃーーーー!」
なんと、下のような驚愕の画像を発見してしまった!
「しっ…しかし、北斗七星の形に無理矢理こじつけているだけじゃないのかね…!?」
だが、この情報は『イワクラ(磐座)学会』という大阪に本部を持つ全国組織によって作成されたホームページに掲載されているではないか! そうなると信憑性は高い。
しかも、この研究を行っている方が、イワクラ学会理事の谷口実智代さんであり、この方は宮崎市内にいるという事が判明した!
やばい! 俺は今、かなり心躍ってるぜ…。
早速、電話にて谷口さんへ連絡し、取材許可を得ることが出来たので、速攻で宮崎市内へと車を走らせた。
「今行くぜ、ラオウ!」
車を走らせ、辿り着いた所は市内橘通東にある『宮崎文化本舗』。ここに、ラオ…いや、谷口さんは在籍している。
まず、今回の噂の真相を語る上で、重要になってくるのが、学会名にもなっている『イワクラ(磐座)』の存在である。
イワクラとは、『神の降りる石』と呼ばれる『巨石』の事だ。以前、このコーナーで紹介した『母智丘神社の陰陽石』もこれにあたる。
谷口さんは、当初は研究ではなく趣味として、民俗芸能研究家の故・鳥集忠男先生の著書を見ながら、諸県の巨石を巡る旅をし、行った場所には地図上に印を付け、最終的には『巨石マップ』のようなものが作れたらいいなぁ〜という思いで楽しんでいた。
しかし、印をよく見ると、ある星座の形が浮かび上がって来たことに気付いた…。
それが、『北斗七星』だったのである。
この北斗七星を形成する神社は次の通りだ。
★皇子原神社(高原町)
★霞神社(高原町)
★東霧島神社(高崎町)
★池之原(山田町)
★母智丘神社(横市町)
★高之峰(財部町)
★住吉神社(末吉町)
そして、これらの神社に共通しているのが……
●小高い丘にある
●山頂部及びその付近にイワクラを持つ
●高千穂の峰が見える
この事から、谷口さんは次のように推測する。
「北斗七星を形成しているイワクラは、高千穂の峰を意識して配置されたもの……つまり、高千穂の峰を対象にした巨石信仰の表れではないかと思います。
山岳祭祀の祭場で高千穂の峰の拝殿なのか…、もしくは火山に対する祈りを石に込めて捧げる場所ではないのかと考えています。」
(ガノ)「なるほど! それにしても、なぜ『北斗七星』の形を地上で再現したんですかねぇ? オリオン座や白鳥座でも別に良かったんでしょうか?」
「これはですね、2つの説があります。」
「高千穂の峰は豊かな水を育む恵みの山ですが、怒り狂う火の山としての一面も持ち合わせており、容赦なくふもとの村を襲っていたかもしれません。
ここで下図を見てほしいのですが、北斗七星は『柄杓型』をしている事が特徴です。
この星の柄杓は、高千穂の峰の方角を向いており、柄杓の右側には『大淀川』が流れています。
そして、柄杓の中を見て下さい。何と『御池』が入っているんです!
どうです!? 星の柄杓で大淀川の水をすくい、汲んだ水(御池)を高千穂の峰にかけようとしているように見えませんか?」
(ガノ)「おおぉ! 見える!!」
「でしょ! そうすることで、火の勢いを鎮めようという願いが込められていたのではないかと考えられます。」
「では、もう1つの説ですが、北斗七星と言えば、中国道教の『反閇(へんばい)』を連想させます。
反閇とは、陰陽道等でも用いられる歩行術で、北斗七星の形を作るように歩く事で、厄よけ・魔除け・安全祈願の効果があるとされています。
つまり、高千穂の峰の火の力と、大淀川の水の力をコントロールする為に、地霊鎮めの呪法を用いて、この位置に北斗七星を描いたと見る事も出来ます。」
「しかしですね、この呪法を用いる……すなわち、道教などの妙見信仰に由来するものと仮定した場合、北極星に相当する物がどこかにあるはずなんです。
妙見信仰では『北極星=妙見菩薩』という考えであり、妙見(北極星)の加護を得て、その土地を守護する為の結界を施すはずだからです。」
「そこで、北極星に相当する物を天体図と重ねて探してみると、若干のズレはありますが、私は『高千穂の峰』がそれに当たるのではないかと思うのです。
霧島山麓に住む者にとって、全宇宙の象徴『北極星』を連想させるものは『高千穂の峰』以外考えにくいですからね。」
(ガノ)「……(唖然)」
「驚くのはまだ早いですよ! 先程の続きで、北極星を高千穂峰とした時、実は北斗七星以外に見えてきた景色があったんです。」
「夜空には星や星座以外に、川もあります。
その1つに、北極星をかすめて流れる『ミルキー・ウェイ』……通称『天の川』と呼ばれるものがありますが、天体図のそれを地上に照らし合わせてみたら、そこには『天降川(あもりがわ)』があったんです!
『天から降りてきた川』ですよ! 信じられませんよね!」
(ガノ)「アンビリーバボー!!」
(ガノ)「谷口さん……あんたは凄いよ……。」
今回の取材で、驚愕の噂の真実に圧倒されたガノ…。
だが、それ以上に『心躍らされた』というのが正直な感想だ。
それは都城圏域に広がる新たな発見と奥深さの実感…。
前回調査した、早水神社の『釣鐘池』の伝説といい、今回の『巨石で描かれた星図』といい、都城圏域は本当に神秘的で、興味が尽きない。
そしてもう1つ、それは谷口実智代さんの存在である。
私と年齢は10歳程度しか離れていない。…にも関わらず、都城・北諸の歴史を深く研究しており、更に巨石から真の歴史を紐解いていこうとしていた。それは自分が目指していた姿でもあった。
(ガノ)「谷口さん、…いや、谷口師匠、…いや、ユリア!」
(ガノ)「かつて俺は、都城史を後世に伝える為に、より多くの知識を手に入れる事を誌面にて誓った。…俺も伝説を追い求めて旅に出るぜ!」
※この記事は紙面「きりしまフォーラム 2008年7月号」に掲載されたものです。