先輩たちの声 No.2
医師 山内 明さん
若い頃に抱いた目標を達成し、更なる夢の実現を目指している人にスポットを当てるこのコーナー。第2回目は早水町で内科・小児科・外科・消化器内科・アレルギー科のクリニックを開業している、早水公園クリニック・山内院長。
本誌で「医療の窓」というコラムを執筆中である山内院長の今迄とこれからを伺った。
まず、医師を目指したきっかけは?
私が中学生の時、祖父が長期入院をしました。その時、病院関係者の方々に接する機会が多かったのですが、私の家族を含め多くの人々が病院関係者にすごく感謝している姿を見てきました。その時、「医療の仕事は人に感謝される、やりがいのある仕事だなぁ」と感じたことが医師を目指すきっかけになりました。
医師を目指すとなると、学力も必要になると思いますが、勉強は好きでしたか?
小学校の3年に上がる頃迄は勉強が嫌いでしたね(笑)。それが小学校3年生の時に受け持ってもらった先生と出会って変わりました。その先生には小学校3年生から5年生迄担任をしてもらったのですが、先生は褒めて伸ばすという教え方で、勉強もスポーツも頑張ったらすごく褒めてくれたんです。それが嬉しくて、先生に褒めてもらいたいという思いで勉強しましたね。その頃から自然と勉強する習慣が身に付いていたので、あまり苦ではなかったですよ。
中学生の頃に医師を目指してからは、夢に向かって一直線でしたか?
高校時代はいろいろ悩んだり、考えたりもしました。ただ、私が恵まれていたなぁと感じるのが友達の存在です。進路についてもいろんな話をしましたし、親に言えないことも相談したりしましたね。学業に関して言うと、私は理系タイプで国語等が苦手だったんですが、高校時代の国語の先生が親身に勉強を教えてくれました。その先生には今でも感謝しています。紆余曲折ありながらも医師になるという思いを貫き、医学部を受験したのですが、希望する大学には受からず、1年間予備校に通いました。今振り返ると当時の自分は有頂天になっていたかもしれません。それが大学受験に失敗して目が覚めた感じです。多感な時期ですから、心が折れそうになったこともありましたが、悔しさをバネに頑張ったこの1年間は自分にとって必要だったと思っています。
その翌年、いくつかの大学に合格することが出来ましたが、どの大学に進学するかは両親に相談しました。いわゆる一般的な家庭だったので、金銭的な負担は少ないに越したことはありません。
そこで防衛医科大学校を選択しました。この大学校は全寮制ということもあり、他の大学に比べて金銭面の負担は軽かった。在学中はアレルギー学教室で研究に携わりました。大変なこともありましたが、6年間一緒に過ごす仲間にも恵まれ、とても楽しかったですね。
ちなみに医師になるための方法としては、国公立大学または一般的な私立大学の医学部の他に、私が通った防衛医科大学校や自治医科大学等へ進学するといった方法があります。
大学卒業後は?
卒業後すぐ医師免許を取得し、2年間防衛医科大学校病院で研修医として働きました。
その後、沖縄での病院勤務を経て、また大学校に戻り医師活動に従事してきました。この頃は急患の対応等もあり、ほとんど家に帰ることなく、病院で寝泊りする日々でした。特に私がいた医局の教授は教育熱心な方で、厳しく指導されたことを思い出します。
研修期間が終了する時に専門の診療科目を決めるのですが、その際、私は小児外科、消化器外科を選択しました。外科の場合、手術等に携わることが多くなるのですが、患者の方と触れ合っているうちに、より多くの人と接することが出来る外来診療が自分には向いていると感じて、外科の他に内科等を改めて勉強しました。当時は勉強のためにいろんな先生を訪ねて、多くのことを学びましたね。
年を重ねると知らないことが恥ずかしく思えて、なかなか人に聞けなくなってしまう気がしますが、若いうちは知らないことは決して恥ずかしいことではないと思うんです。
それらの経験を元に開業されたのですか?
はい。最初に千葉県でクリニックを開業したのですが、2011年に起きた東日本大震災が故郷に戻るきっかけとなりました。いずれ故郷である都城に戻って医師活動をしたいという思いはありましたが、震災を経験したことで故郷への思いがより強くなり帰郷の決断をしました。
今、感じていることは?
私の役割は交通整理のようなものだと考えています。まずは、かかりつけの医師として私が診療し、より専門的な治療が必要と判断した場合には専門病院に繋ぐ役割だと思っています。
また、病院というと病気になってから行く所というイメージがあると思いますが、私は予防のための病院があっても良いのでは、と感じています。病気を未然に防ぐ、病気を早期発見するために気軽に足を運んでもらえる病院でありたいと思いますね。元気がなかった人が元気になる姿を見たり、病気が早期発見出来、快方に向かっている人たちから感謝してもらえることは医師としてとてもうれしいことです。
今から夢に向かって進んでいく後輩達にメッセージを。
先にも述べましたが、若いうちは知らないことを恥ずかしいと思わずにいろんな人に教わってほしいですね。医療の世界は日進月歩で私も日々勉強ですが、皆さんも恐れることなく前に進んでいってほしいと思います。
ありがとうございました。
あとがき
山内先生は診察の際、常にネクタイを着用している。
研修医になりたての頃、医局の教授からプレゼントされたネクタイが山内先生の原点だ。
「君達はこれから患者を診ることになる。その時は患者に敬意を持って接してほしい。敬意の表し方は様々だが、身なりをきちんとすることが大切だ。特に君達研修医は患者を診るのではなく、診させて頂いているという気持ちを忘れないでほしい」と訓示を受けた。それ以来習慣となり今でもネクタイをしていないと落ち着かないらしい。そのエピソードに山内先生の人柄を垣間見た気がする。
(取材協力) 早水公園クリニック TEL 0986-36-6117