ここではエタンセレクトの文庫本を中心にご紹介しています。
今回は、「パレード/吉田修一(幻冬舎)」です。彼は、2002年に今作で第15回山本周五郎賞受賞、同年にバーク・ライフで芥川賞を受賞し話題になりました。
物語は、都内の2LDKマンションで暮らす若い男女5人のそれぞれの視点から描かれている。H大学経済学部の良介、彼氏からの連絡を待ち続けるだけの琴美、深酒を繰り返すイラストレーターの未来、若さを切り売りする男娼のサトル、みんなの頼れる兄貴分で映画配給会社に勤務の直輝。
個々が色んな問題を抱えながらも、2LDKの中での「本当の自分」を演じることで、平穏な生活を保ち続けている。そんな中、微妙な愛情や友情が生まれているが、それでもお互いのことは、よく知らない。今の暮らしが心地よい彼らは、自分に関係が無ければ、自分さえ良ければ、何が起きても知らないふりをしている。たとえそれが、狂気に満ちた事実であっても。
この話は、決して、読後に清々しい気分がする話ではない。それでも、もう一度読み返したくなる不思議な話だ。ラストの衝撃が今も忘れられない。くれぐれも、第一章から順に読んで下さい。
2月に映画化され、再び注目を浴びています。まずは本で楽しんで下さい。