ここではエタンセレクトの文庫本を中心にご紹介しています。
今回は、「コンビニたそがれ堂/村山早紀(ピュアフル文庫)」です。元々は児童書として書かれた作品ですが、大人が読んでも心に響く連作短篇集です。
風早の街の駅前商店街のあるはずれ、赤い鳥居が並んでいるあたりに、夕暮れになるとあらわれる不思議なコンビニたそがれ堂。大事な探しものをしている人だけがたどり着ける魔法のコンビニです。毎日、探しものをしている人が立ち寄っています。
五篇の中でも「あんず」は特に切なく、心に沁みます。自分の死期を知った小さな白い子猫のあんずは、人間になるための飴を買いにたそがれ堂へ。それは、自分を拾って大切に育ててくれた家族に人間の言葉でお礼が言いたかったからでした。ずっと一緒にいたいという叶わぬ想いが切々と伝わってくる物語です。永遠の別れは辛くて寂しい。けれど、たそがれ堂の店員は言います。「ただ、一つ、言えることがある。見えなくなっても、会えなくなっても、きっと《どこか》には、みんな、ちゃんといるっていうことさ。消えてしまう訳じゃない、誰の魂も、どんな想いもね。」と。
何かを探している人、日々に疲れている人、コンビニたそがれ堂へ行ってみませんか? きっと、自分の大切なものを見つけられる一冊になると思います。