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エタンセレクト、読書のススメ。『読書道(どくしょどう)

ここではエタンセレクトの文庫本を中心にご紹介しています。

■ぶらんこのり

──「おたがいにいのちがけで手をつなげるのは、ほかでもない、すてきなことと思うんだよ。」

(本文より)

「ぶらんこ乗り(いしいしんじ)」表紙今回は、柔らかな表現で綴られた大人の童話のような「ぶらんこ乗り/いしいしんじ」です。今作は、いしいしんじ初の長編作品。読んでいるうちに温かな涙がこぼれてくる作品です。

 

誰よりも上手にぶらんこに乗り、頭が良く、お話を書くのが得意な弟。その弟が残したノートを見つけた姉の回想と幼き日に弟が作ったお話を中心に、物語は進んでいく。

 

サーカスを見に行き、ぶらんこ乗りに夢中になった弟。毎日のように、ぶらんこに乗る。そんな弟が声を失い、木の上のぶらんこで1日の3分の2を過ごすようになった。その頃から、動物の声が聞こえるように…。弟は、動物に聞いた話を、次々と物語にしていく。象やペンギン、カンガルー…いろんな動物の話が出来るたびに、姉は嘘だろうと笑いながら聞いている。弟は、そんな姉の笑い声にいつも救われていた。「向こう側」に引っ張られそうな孤独な自分を、唯一こちらの世界へつなぎ止めてくれるのは、姉の声だったからだ。そんな2人に、さらなる事件が。悲しみに暮れる2人だったが、素敵な贈り物が届く。それは、姉をしっかりこの世界に留めさせておくための、弟の最後の物語が引き寄せた奇跡だった。ノートに記された弟の幼い文字に、姉はその事実を知る。そして今、もうここにはいない弟への愛しさが溢れ出す。きっと帰ってくる、弟は世界一のぶらんこ乗りだから。大丈夫、ちょうどいい引力に従って、もといた場所に戻ってくる。姉は、ぶらんこをゆるやかに漕ぎながら待っている。

 

姉弟愛のひとことでは片付けられない、2人をひきつけあう引力の強さに心打たれます。弟がつくる物語は、優しいのに切なく、そしてどこか寂しい。どのお話も、心にギュッときて涙が出そうになります。「手をにぎろう!」や「うたうゆうびんはいたつ」は、何度も読み返したほど。読後の余韻に浸りながら、「きっと、弟は帰ってくる。」と、私も願っていました。終始ふわふわとした文体で、読みにくいと感じる人もいるかもしれません。しかし、一読の価値あり! 読後は、身近な人や周りで起きる出来事に、不思議な引力を感じるようになるかもしれません。読むたびに愛おしさが増す作品です。

 

「しあわせ絵本レシピ(近藤幸子)」表紙続いて、食欲の秋にお子さんと楽しめる美味しくて可愛い本をご紹介。

 

「しあわせ絵本レシピ/近藤幸子」は、「ぐりとぐら」や「はらぺこあおむし」など一度は読んだことのある絵本に登場しているお菓子のレシピが載っています。写真も可愛いので、眺めるだけでも楽しい!

 

9月の連休に、親子で一緒に作ってみてはいかがでしょうか?

 

私も、子供の頃に大好きだった「ぐりとぐら」の大きなカステラが載っていたので、挑戦しようと思っています。